音楽療法士

「大湊幸秀」は・・

大湊幸秀 略歴 ▶

「音楽療法士へ」

 

 1999年3月に老人保健施設より「仕事として音楽療法を行ってほしい」と依頼されるという、非常にラッキーなスタートでありましたが、当時の私にとっては「困惑」でしかありませんでした。

 その3年前の1996年から音楽療法の勉強していた私でしたが、諸先輩方の音楽療法に接して「私には無理、出来ない」と、実践研修ではいつも後ろの席に座り、影のような存在として参加していました。

 その私に施設での音楽療法依頼が来たのです。

 「困った、どうしよう」という気持ちが一番先によぎりました。

 

 自営業は「今、目の前の仕事を逃したら次はない」「今度とお化けに会ったことがない」(今度はちゃんとしたギャラを払うから、今回はこの金額でなどの話で、この次が来たことがない例え話)という業界です。

 

 当時は、ピアノやエレクトーン、ドラム、コンピュータミュージックなどの講師をしながら、コマーシャルの仕事(作曲など)をしていて「音楽が心におよぼす力」などに興味があり音楽療法研修に参加していました。

 仕事として来た話はすべて受けてきたのですが、音楽療法の仕事は迷いました。

 

 まず高齢者と接することが殆どなく、何を話して良いのか、何が喜ばれるのか、認知症(当時は痴呆)の勉強はしていたが実際に認知症の方に接したことがないなど、高齢者の方々の実態がわからない。

 高齢者用の施設やディサービスがあること自体、音楽療法の勉強をして初めて知った次第です。

 そして音楽は芸術でなくてはならないなどと思っていたので、懐メロや歌謡曲、演歌など知らないし興味もありませんでした。(実際は違ったのですが、当時は芸術家を気取っていました)

 

 しかし悩んだ末(今思えば贅沢な悩みです)、仕事として受けることにしました。

 

 

 

  =当時の私=

 

 

 

 

 4月からすぐに音楽療法を行ってほしいと施設側から言われましたが、どんなプログラムで、どのようなセッションをしたらよいのかイメージ出来ません。

 そこで施設の方に1ヶ月待ってもらい、弁当持参で施設に通いました。高齢者の方々の実態調査です。

 午前10~11時位に施設に行き、施設で高齢者の方々がどのようなことを行っているのか見学し、昼みなさんと一緒のテーブルで昼食(私は弁当)しながら話をして笑って帰ることを、約1ヶ月おこないました。

 しかし私が来るのを高齢者の方々は不思議だったらしく、あとすこしで1ヶ月という時、昼食時向い側に座っていた方から「あなた、ここに(施設)入ったの?」と不思議そうな顔で言われたのを懐かしく思い出します。

 

 1999年5月11日(金)いよいよ施設での音楽療法が始まりました。入所されている方、通所されている方で希望者だけですので12~13名くらいだったと思います。

 入所されている方は、音楽療法か作業療法かどちらか希望の方に参加でしたので、向こうでは作業療法を行っています。

 その時のプログラムを見ますと、歌は全部で10曲、あとはクイズやリズム運動などで、今のプログラムとは全然違いますが我ながら良いプログラムで、今一度使ってみようかなと思ってしまいます。

 その日のセッションは大変盛り上がり(みなさんが盛り上げてくれたと思いますが)、喜んで頂きました。

 

 終わっての帰り道、施設の横を歩いていると窓が開き「さようなら~! また来てネ! 楽しみにしているからネ!」と数名の80~90代の方々が、女学生のように窓から身を乗り出して声をかけてくれ、胸が熱くなったのを覚えています。

 

 家に帰って思いました「これは私の天職だ! この音楽療法の仕事のために、今までの人生があったのだ!」と、それまでの「私には無理、出来ない」という思いはどこかに飛んでいってしまったのです。

 翌週から作業療法に参加していた方々も徐々に音楽療法に参加し始めたため人数も多くなりましたので(作業療法しながら皆さん歌っていたそうです)、翌月から入所されている方々と、通所されている方々とを分けて行いたいと施設側に申し入れましたら「そうしましょう」と、すぐ6月から週2回行うこととなりました。

 

 この施設では16年目の現在(2014年)も毎週木曜日、金曜日、その他に水曜日は月2回音楽療法をおこなっています。

 

 

  =現在の私=

「様々な出来事」

 

「もう、こんなことやめましょうヨ!」事件

 ある施設で毎月音楽療法を行うことになった初日の事件です。

 日光は入り、照明もしっかり点いているのですが、何となく暗い感じの施設でした。

 「それでは元気に体操をしましょう」「最初は元気に歩きま~す。1・2・3」と音楽に合わせて体操を始めた時、ちょうど4拍目で「もう、こんなことやめましょうヨ!」と最前列の女性(80歳くらい)が大きな声で言うのです。

 その後もきちんと4拍目、1・2・3「もう、こんなことやめましょうヨ!」

 この言葉を体操が終わるまで5~6回大きな声で言ってましたが、私と目線は決して合わせません。

 施設職員の方が何かフォローしてくれるのを待ってましたが、最後まで何もありませんでした。

 後に「あの方の口癖です」と聞きましたが、そのときの私「心はボロボロ!」です。

 体操が終わってから、名札を見てその方の名前を呼びながら次のプログラムを行いましたら、「もう、こんなことやめましょうヨ!」は一度も言わなくなりました。

 次回からは施設に行ってすぐ、その方を見つけ名前を言いながら何かと話をするように努めましたら、その後一度も言わなくなりました。

 参加される方との「事前コミュニケーション」が重要と思い知った出来事です。

 

 

「誰の許しを受けて、始める!」事件

 これも「それでは元気に体操をしましょう」「最初は元気に歩きま~す。」と音楽に合わせて体操を始めた時、前から3列目位の女性(70歳くらい)が「誰の許しを受けて、始める!」と大きな声で何度も叫び始めたのです。

 3年程、毎回音楽療法に参加されている方ですが初めてのことです。

 参加されている皆さんにも、きちんと聞こえる大きな声なのです。

 この時はアシスタントの方が参加してましたので、その方に体操を任せ、私は話をするためにその女性の傍らに行きました。

 その女性は「誰の許しを受けて、始める!」「タンスを開けたら水が沢山出てくるんだ!」「息子は・〜」「誰の許しを受けて、始める!」などと支離滅裂な事を言ってるのですが、しばらく話を聞いているうちに落ち着いたのか笑顔となり「がんばんなさい」となり、ホッとしました。

 その方が納得されるまで話を聞く大切さを実感した、出来事です。

 

 

「おじさん、こんな所で」事件

 ディサービスに通われている方で身体的障害はない80歳代の女性ですが、認知レベルが非常に落ちている方です。

 そのディサービスには、もう4年以上通われていますが「ここは何処?」「トイレは何処?」「私は何をしたらいい?」「何処に座る?」などの状況で、自分の名前・年齢はわかりません。もちろん家族の事もわかりません。

 踊りが好きな方で、特に民謡の歌を始めると必ず立ち上がり踊り始めるのですが、椅子から立ち上がった瞬間、自分が何処に座っていたのかもわかりません。

 その様な方が、暫くディサービスに来ませんでしたので、私は「どこか違う施設に移ったのかな」などと思っていました。

 3ヶ月ほど経った音楽療法の日、始める前にCDセットなどの準備をしてましたら、後ろから私の肩を叩く人がいるので振り返りましたら、あの椅子から立ち上がった瞬間、自分が何処に座っていたのかわからなくなる方だったのです。

 その方が「おじさん、おじさん、こんな所で久しぶりだね」「前はいろいろお世話になったね」と笑顔で話しかけてくれているのです。

 家族の事など忘れている方が、私のことを覚えているのです。それも3ヶ月後に。

 ビックリですが、最高に嬉しかったのを思い出します。

 その日も元気に踊りましたが、やはり踊り終わった後どこに戻ったらよいのか状態でした。

 認知レベルが下がった他の多くの方々も、私の事を覚えていてくれ、嬉しくなることが多々あります。

 「音楽療法士になって良かった」と思う瞬間です。

 

 

「入所されている家族の方が参加」

 時々、入所されている家族の方が参加することがあります。

 その家族の方が音楽療法終了後に「母が私(娘)のことはわからないのに、大湊先生の名前を良く口にするので参加しました。今日、参加して良くわかりました。」と笑顔で帰られた方が何名かいらっしゃいます。

 その後、毎週一緒に参加される御家族の方もおられます。

 

 

「脳が活性化」

 音楽療法終了直後、100歳を越えている女性に男性が「おれ! おれ! 俺のこと覚えてる?」と言ってきました。

 その女性は「あんた、息子でしょう」と言いましたら、男性は大変ビックリ!いつもは「あんた誰?」と言うのに。

 音楽療法で脳が活性化した素晴らしい事例と思います。

NPO法人 日本ナラティブ音楽療法協会

〒070-0031 北海道旭川市1条通11丁目 ロジェ111 A-303

   TEL & FAX 0166-26-1677

    東京   TEL & FAX 03-6811-1105

大阪   TEL & FAX 06-6105-7284

jn-mt@nifty.com

Monologue Return
TOP HOME

since 2013-01-1 / Copyright 2013 Japan Narrative Music Therapy Associacion. All Rights Reserved.

JNMTA